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ヴェールト詩抄 2

 投稿者:doitsugoken  投稿日:2008年 7月 1日(火)18時00分48秒
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  コーヒーも売っている、それを
尊いドイツにも送り出している
何しろあちらではコーヒー用の水しか
工場でつくれないんだから

僕の通ったすばらしい田園よ
そこでは実践的利益が勝利し
最高の精霊がひとり
風車の羽根のように空高く天駆ける!

そして風車はゆっくりと
夕焼けに染まって回っている −
おお、幸多き国よ、ここでは今
僕だけがドン・キホーテのようだ


  赤裸々

感覚が冷たいままなら、どんなに頑張っても冷たいままなのだ
空しくあたりを堀じくり回すうじ虫と同じだ −
暖かい人間の生命をその両手で感じた者だけが
幸福になれるのだ!
その心臓に寄り添ってもうひとつの心臓が鼓動し
その頭にもうひとつの頭をもたせかけさせた者が
愛の嵐に引きさらわれて
充足の大海にたどりつくことができる

愛の嵐はお前を青い波に乗せて
花咲き乱れる岸辺に沿ってゆらゆらと運ぶ
嵐のただなかにいる仲間にバラが挨拶を送る
岸壁からブドウの蔓がうなずく
だが、もっと先に進みなさい、そうすればお前の眼前で
巨大な流れとなった大洋がきらきらと輝き
お前の心臓は、悦楽の嵐のなかで
歓喜の声をあげながら波のなかへ消えていく

それが洗礼だ、新しい生命となって
太陽の光へと変身することができたのだ
自然がお前をお気にいりとして選んだのだ
お前ははじめて一個の人間となったのだ
全てがお前に開かれた瞬間
その瞬間にお前は男としての印章を押されたのだ
抱擁のなかでお前は鮮烈にはじける
これこそ純潔が千年も待ち望んでいたものだ!

それは、最も高貴な彫刻を彫ろうと考えていた
賢いギリシャ人にのみできたことだ
裸体の甘い魔法が、ヴェールをはがされた豊かな自然が
彼らに笑いかけたときに
人間のなかにのみ神々しいものを
純粋な感性のなかにのみ人の道を見いだした巨匠は
大理石から解き放たれた彫像のように
時代を越えて輝いている

教会の内陣をさまよい
涙するマドンナとともに泣いてばかりいたその眼は
喜々として、鮮烈にして明るく魅力的な花のなかに
光輝のなかに身をひたして欲しい
夜の秘めやかな祝祭のときに
お前の神であり、生命であり、最愛のものであったものが
鑿と七弦琴に魂を吹き込ませ
赤裸々に、のびやかにくっきりと形造られる

自然のままに力の限りつくすことを
恥じて震えているようなら
最良の生も陰となり
どんなに雄猛な鷲の力も萎えてしまう
まさに自然が永遠に美しく
気高く赤裸々に輝いているように
娘たちも息子たちも
いまのまま感覚的であることを恐れないで欲しい


  工業

その前では、何千年もの歳月も、
昨日荘厳な光輝を発して去りたる一日に過ぎず、
時間という嵐の破壊をものともせざるなり; −
嵐はその前を力なく過ぎ行くのみにて、
それに比するはひとり人間のすばらしき精神のみ、
そのすばらしさは永遠に讃えられ、
いかなる破滅からも自由にして、
光芒を放ちて己が軌道を己が方向に進むなり!

そはインダスの聖なる川辺に住まいし、
ギリシャの緑なす野を席巻し、
イタリアの炎天で輝き花咲き、
ドイツの暗き森にて歌えり。
そは荒れ狂う海原を遊弋し、
ナイアガラの轟きのなかで大声を発す;
「歳月如何に進むとも、
われ神代と変わらず。」

そは最高者の実を持してきたり、
人間は大胆に諸元素を訓馳し、
たゆまず前進し、ますます欲望をひろげ、
夕闇至るも勤しみを終わらせず、
天体をも故郷の
花園の如く解き明かし、
新しき世界を日々発見し、新しき生業を、
よりすばらしき享受を産み出すなり。

そは現代に創造力豊かに取り組み、
きらめく形姿を産み出すなり!
一世紀もの間待ち焦がれていたもの
美事に花開くなり! −
生に背を向ける愚か者たちよ、
きみたちは古えの奇跡にのみ魅せられているに過ず。
奇跡は現代から咲き出で、
過ぎ去った時代のそれの如く偉大なり! −

人間は緑輝く森に分け入り、
トウヒの巨木を伐り出す。
鉱の切羽で鉄を掘り出し、
明るき日の光に曝す。
また、船を満たして、
大洋の彼方の外国の岸辺に
希望に胸膨らませたる乗客たち
ヨーロッパから運ばれて行かる。

また、蒸気もうもうたる都会の台所では
何千という食事のための炎が激しく燃え盛る!
自然がそのままに蔵していたものから
純粋な要素が分離される。 −
かかることはかの神にのみ許されたること、
かの神は馨しい頭を再び擡げて起きあがる。
かのへーパイトスは、蒸気機関車で驀進せる
人間を見て、魂消て腰を抜かすべけん!

曙光の翼は空の果てに憩いの臥所を求めて
飛翔することもはや要しない。
己の技術が轟々と音響かせてわれらを
諸国民の庭園たる大陸のどこへでも運ふなり!
流れにも潮にも逆らって船は急ぎ進み、
至るところ何百万もの瞳の中には、
夜の闇は消え、人間が人間を再発見せりとう意識が
明々と燃えさかっておなり!

かくの如くわれらが時代の奮闘が轟音をとどろかす。
工業が現代の女神なのだ!
確かにまだ彼女はバジリクスの眼もて
冷徹なる心臓をたゆみなく拍動せしめている。
薄暗き玉座に座りて、
止むことなき賦役に鞭もて駆り立て、
その冷たき神殿にて貧しきものたちの
額に恐ろしき禍の刻印を深く刻んでいる!

飽くことなき迷誤の欲望もて
人間を生贄にすべく彼女は再びここに立ち、
涙してパリアは頭を隠し、
他の神は黄金の飾りを煌めかす。
度重なる戦さに涙を重ね、
捷報あるも困窮増すのみ!
剣と鎖を鍛造する者も
剣もて鎖を免れうるのみ!

彼が賦与したるもの、それは人間の気高き精神なり、
これは一者ではなく万人の具有するものなり!
かくして最後の鎖は音を立てて引き千切られ、
最後の貧しきものたちが立ち上がる。
かの暗き女神は変容してそこに立つ −
彼女に近づく者全ては幸を掴み、喜びを得る!
だれも免れ得なかった労働の辛苦を、
その巨岩を彼女は自ら脇へ転がし退ける!

これにて完成なり!そして偉大なる書に
高らかに歴史の奇跡が告知され、書き記される、
「ここに人間は独り立ちせり、
人間は人間のためにのみ心を燃やすなり。」
長きに渡り弱々しかりし演説の声も自由に響き渡り、
人間の行程も大地の上を自由に進むなり!
そして自然は魅力あふるる接吻もて
生きとし生けるものを楽しき享受へと誘う!


  飢の歌

拝啓 王さま
次のようなひどい話をご存知ですか
月曜日はろくに食わなかった
火曜日は食うものがなかった

水曜日は腹ぺこだった
木曜日はひどく苦しんだ
ああ、そして金曜日は
飢え死にしそうだったんだ!

だから、土曜日には焼いて貰ったさ
柔らかくてまっ白なパンをね −
さもなけりや、日曜日には、王さまよ
お前をひっ捕まえて食っちまうところだったんだぞ!
 

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