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ヴェールト詩抄 3

 投稿者:doitsugoken  投稿日:2008年 7月 1日(火)17時58分36秒
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    ブドウ農民

アール河とモーゼル河に沿って
ブドウがたわわに実っていた
農民はあさはかにも考えた
これで貧乏ともおさらばだ

すると商人が方々から
やってきて、言うことにや
「借金のかたに
収穫の三分の一はこちらのものだ!」

さらにお役人がコブレンツと
ケルンからやってきた
「お次の三分の一は税金として
国に収めてもらう!」

農民が困りはて
天に向かっておすがりすると
雷と嵐のなかから声がした
「百姓たちよ、残りはわしのものじゃ!」

もはやにっちもさっちもいかなくなった
苦しみと蔑みと嘲笑があるばかり
悪魔に苦しめられなかったら
神様が苦しめて下さるというわけか!


  かわいそうなトム

死神がかわいそうなトムに言った
「かわいそうなトム、おいでよ!
冷たい墓におりておいで
おいで、トム、おりておいで!

安心しなさい、勇気を出しなさい
かわいそうなトム、よくしてやるよ!
おいで、ゆっくり休ませてあげるよ
おいで、トム、ふとんを掛けてあげるよ!

きれいな花のふとんを掛けてあげるよ
かわいそうなトム、苦しみなんか
みんな忘れてしまうんだ、トム
おいで、トム、おいでよ!

おいでよ、もうお前のべットはできてるよ!」−
一晩じゅうかすかにこんな声がしていた
不思議な声だった
「おいで、トム」、とうとうトムは行った


  ランカシアの歌

   かわいそうな仕立屋

かわいそうな仕立屋
背がまるまりぼけるほど縫い続けた
30年も縫い続けた
何故とわからぬままに

土曜日が来て
一週間がたった
すると彼は泣き始めた
何故とわからぬままに

彼はピカピカの針と
ひん曲がった鋏を手にとった −
そしてぶち折ってしまった
何故とわからぬままに

それから何本もの丈夫な糸を束ねて
首にまきつけた −
そして梁にぶらさがった
何故とわからぬままに

彼はわからなかった −
夕べの鐘がブーンと鳴った
仕立屋は7時半に死んだ
何故だか誰もわからない


  ハズウェル鉱山の百人の男たち

ハズウェル鉱山の百人の男たち
ある日彼らは死んだ!
同じ時間に死んだ!
同じ一撃で死んだ!

みんな静かに葬られたとき
百人の女たちがやって来た
ハズウェルの百人の女たちがやって来た
見るにたえない様子だった

子供たちをつれてやって来た
息子や娘をつれてやって来た
ハズウェルの金持ちの旦那さま
わたしらのお給金を下さいな!」

ハズウェルの金持ちの旦那は
長くためらいはしなかった
死んだ男たちの
週給を支払った

給金を支払ってしまうと
金庫を閉めた
鉄の鍵がガチャンとおろされると
女たちはまた泣いた


  ランカシアの飲屋のおやじ

ランカシアの飲屋のおやじ
けちなビールをついでくれるよ
昨日も今日も相変わらずだ
客は貧乏人ばかり!

ランカシアの貧乏人たち
よくこの店に寄っていく
すり減った靴をはいて
すり切れた上着を羽織って

最初に、素寒貧の
顔色の悪い無口のジャックが口を開く
「たいがいのことはやったけどさ −
いいことは何もなかったよ!」

するとトムが言った、「もう何年も
細くてきれいな糸を紡いできたさ
羊毛の服はいいとこの方がお召しになるんで −
こちとらときちゃそんなもん拝んだこともねえ!」

ビルも口をはさんだ、「この腕で
イギリスじゅうを耕してきたさ
みごとに稔っていたがね
こちとらときちゃ空きっ腹のまんま寝る始末だ!」

すると隣が叫んだ。「炭鉱の底で
ベンの奴は石炭を何トンも掘ったさ
かみさんが子供を生んだけどよ −
ちくしょう、かみさんも子供も凍え死んじまいやがった!」

ジャックにトムにビルにベン −
みんないっしょに叫んだ、「ちくしょう!」
その夜、柔らかな羽根蒲団で
お金持ちはいやな夢を見た


  大砲を鋳る男

山は一面露に濡れ
空では雲雀が歌ってた!
まずしい母が −
まずしい男の子を生んだ!

16才にもなると
この子の腕も逞しくなった
まもなく工場へ行って
革の前掛をつけ、ハンマーを握った

溶鉱炉のどてっ腹を
重い鉄棒でほじくると
燃えがらと煙のなかから
真赤な鉄が流れ出した

彼は大砲を鋳たのだ、何個となく!
それは四海に轟き
フランス人をやっつけ
インドを破壊したのだ

砲弾を、無残にも
シナ人の横っ腹にぶちこんだ
このようにして鉄の喉と口びるで
イギリスに名をなさしめたのだ!

この陽気な主人公は長年のあいだ
ピカピカの大砲を鋳造し続けた
だが、とうとう年には勝てず
腕が役に立たなくなってしまった

腕がなまくらになってしまうと
なさけは無用
さっさとお払い箱だ
役立たずや貧乏人に仲間入りだ

彼は出ていった、怒りに胸をふるわせて
まったく、鋳型からとり出した臼砲から
砲弾がいっせいに
雷のように炸裂するかのようだった

だが彼は静かに言った、「先のことじゃないさ
いまいましい犯罪人どもめ
おれたちの楽しみのために
24ポンド砲を鋳るときが来るさ!」


  彼らはベンチに坐っていた

彼らはベンチに坐っていた
テーブルをかこんで
ビールを注ぎあい
座はたけなわだった
何の心配もなげに
憂いも悲しみも知らず
昨日も明日も忘れてた
ただこの日だけを生きていた
 

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