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ヴェールト詩抄 4

 投稿者:doitsugoken  投稿日:2008年 7月 1日(火)17時54分28秒
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  榛の木の下に坐ってた
夏のよそおいは美しかった −
ヨークやランカシアの
気の荒い男たち
がらがら声で歌い
夜中まで坐って
「シレジアの織工一揆」について
語りあった

くわしいことがわかると
涙を流さんばかりだった
逞しい男たちは
急に立ち上がった
こぶしをまるめて
激しく帽子をうち振った
森や野に響き渡った
「頑張れ、シレジア!」


  闇夜がやってきた

闇夜がやってきた
松が嵐のなかをざわざわ騒いだ
暴風で教会は塔もろとも
倒壊してしまった

十字架はとび散り、祭壇は押しつぶされた
棺のなかの聖遺骨は粉々になり −
ゴシック様式の丸天井は
大音響とともに墜落する

村の方に教会全体が倒れかり
まるで墓場になってしまったようだ −
すると、びっくりしてべットから起きあがり
男の子が母親につげる

「ああ、おっかあ、へんな夢をみたよ
それで目が覚めちまったんだ
おっかあ、夢を見たんだよ
神様が死んじまったんだ」


  黒い沼の家

あれが黒い沼の家だ!
去年そこで凍え死んだ者は
今年は凍え死ぬことはない −
もうとっくに棺桶に入っているのだから

あれが黒い沼の家
老いたジャンが凍え死んだのだ
ドアの方へ白い顔を向けて死んでいた
自分じゃわからなかったろうが

彼は死んだのだ。朝が来て、
臆病な鹿のように、雪の上を飛び跳ねていた
「おはよう、ジャン! おはよう、ジャン!」−

澄んだ鐘の音が鳴り響き
歌い、奏で、叫んだ
「おはよう、ジャン! おはよう、ジャン!」−
ジャンは返事をすることができない

子供たちが町からやって来た
「おじいさんはみんなが好きなんだ
おはよう、ジャン! おはよう、ジャン!」−
ジャンは返事をすることができない

朝も鐘も子供たちも彼にはもうわからなかった
陽ぬるむ昼時になって
ひとりのおばあさんがやって来た
「ジャンや、お昼を食べるだろ

ほら、町から持って来たんだよ
おいしいからたんと食べてあったかくおなりよ!」−
彼女は長いことジャンを見つめていた
それからひどく泣きはじめた

彼女は黒い沼の畔で泣いた
ジャンじいさんが凍え死んだ沼の畔で
彼女は熱い涙を
冷たい雪に落した


  メアリ

アイルランドから潮に乗ってやって来た
ティペレアリからやって来た
やさしくててきぱきした気性
若い娘メアリ
思いきって岸壁にとび降りたら
船乗りたちがはやしたてた
「娘っ子のメアリだ、たいしたものよ
まるで野バラさ!」

さっさと広場に行くと
ひとりの若者が挨拶した
「娘っ子のメアリだ、たいしたものよ
きれいな二本足で歩いてら」
リヴァプールで黒い瞳のメアリが
ツンとすまして坐っていると
彼女のまわりに
連中がわんさと押し寄せる

アイルランドから潮に乗ってやって来た
ティペレアリからやって来た
「オレンジはいかが、新鮮でおいしいよ」
娘っ子メアリは叫んだ
モール人もペルシア人もムラートも
ユダヤ人も改宗者も −
この港町の誰もがやって来て
残らず買って行った

一艘の船も川を遡航せず
一艘の船も航海に出なかった
船の上で恋におちた若い船乗りが坐り
考え事をしていた、リヴァプールの広場に
やっとのことで来てみりゃあ
ティペレアリからやって来たあの娘が
オレンジをひろげて坐っているじゃねえか
娘っ子のメアリがさ!

こんなにでっかい愛があるだろうか
マージーの岸辺であの娘は
船乗りの恋人が千人もいる
陸上にはそれ以上だ
マストに機械の音の響く
海の上のどこへ行っても
船乗りの心はさまよい
あのオレンジのことを想ってた −

でもあの娘はつれなく邪樫にはねつけた
あの唇も広場の売場で
髭づら男の心を
いつも焦がすばかり
キスなんかさせなかった −
まったく情におぼれることはなく
悪態をつき、金切声をあげ、ああ
抱こうにも、するりと逃げてしまう

みずみずしい黄金色の果物を売って
かせいだ金を持って
怒った顔をして
家へすっとんで行った
金を取りだしてしまい込んだ
一月になるとさっそく
速達でアイルランドに送った
ピカピカの金を

「これを我が民族のために
あなた方の会計に寄贈いたします!
起て、剣と斧を研ぎ
昔の恨みをかきたてよ!
無法にもおい繁げろうとしているのです
ティペレアリのクローバーの上に
イングランドのバラが。オコンネル氏に
メアリより挨拶を送ります」


  若い職人の歌

   別 れ

俺の年老いたおふくろは
夜なべをして
柔らかいリンネルの
すばらしい肌着を縫ってくれた

きりょうよしの妹は
気のきいた娘で
すばらしい絹糸で
俺の立派な名前をそれに刺繍してくれた

朝、3時半に
雄鶏が鳴いた
さあ、背嚢の紐を結んで
旅に出発だ

朝、3時半に
おやじを起こしに行った
錆だらけのクローネ貨を3つ
財布に入れてくれた

俺たちは菩提樹の下に立っていた
俺の心は重苦しくなるばかりだった
おふくろは、俺の顔を見ることは
もうないだろう、と真顔で言った

おやじは黙っているばかりだった
妹はすすり泣きしていた −
その時、小麦畑に
金色の太陽が昇って来た!

市門のところで
「さらば、活気のない町よ!
さあ、自由で楽しい人生が
始まるんだ!」と叫んだ
 

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